『治らない傷跡』

セルバが叫んでセイカ達の方へ走り出していた。

「おい!待てって!!セルバ!!」

セイカは必死に叫んでセルバを止めようとしている。

「うるさい!!邪魔だ!!!」

そう言って剣を振るセルバ。それを受けたセイカは弾き飛ばされてしまった。

「セイカ!!・・・何よ!!あんた!!」

アラベルがセイカが飛ばされたのを見てセルバに鉄棒で殴りかかった。

「お前は・・・誰だ!?邪魔だって言ってるだろ!!!」

殴りかかってきたアラベルを力ずくで弾き返すセルバ。キールがその様子を
見ていた。

「やばいな・・・何がどうなっているのか分からないが・・・セルバは
本気みたいだ・・・。それにアラベルの力を・・・あんな力ずくで
弾き返してるってのも・・・ちょっと怖いな・・・。」

キールが呟くように言った。そして、辺りを見渡した。

「ダーゴ、ルサ!頼んだ。援護する。」

そう言われた二人は頷くとセルバの方に突っ込んでいった。パールは
イザスクを治療していた。ルビーはロギの治療をしていた。

「・・・ダーゴに・・・誰だよ・・・くそっ・・・セイカ・・・
お前達は一体何やってるんだよ!!!!!」

奇妙な闘気を纏いながらセルバが突っ込んできた。軽々とルサとダーゴの
相手をするセルバ。

(くっ・・・駄目だ・・・疲れている・・・。)

ダーゴが自分の体が思うように動かないのを感じていた。ルサも同じく
動きが優れていない。

「・・・下がれ!!・・・風魔法(サイクロン!)」

キールがそう叫ぶとダーゴとルサはセルバを弾き飛ばす様にして
距離をとった。

「くっ・・・。」(何故・・・あいつを助ける・・・!!?)

イザスクの方を睨みながらセルバは両腕をクロスさせて風を防いでいた。

「セイントプロテクト!!」

セルバはそう叫ぶと凄い勢いでイザスクの方へ走り出した。
白い鎧・・・だが少しまがまがしい光を放つ鎧を身に纏ったセルバが
ダーゴを左手で殴り飛ばした。

「ぐあっ・・・。」

ダーゴが吹っ飛ばされる。セルバは剣を持つ右手でルサに斬りかかった。
ルサは剣を横にしてそれを防ごうとした。しかし、金属音と共に
剣が折れてしまった。

「っ・・・!!」

次の瞬間に鈍い音がした。ルサはなんとか身をかわそうとしたが
浅く左肩を切られてしまった。折れた剣を持ったまま右手で傷口を押さえる
ルサ。セルバはそのままイザスクに向かって走って行くためにルサから前に
視線を戻した。

「っ!!?」

セルバは前から飛んできた矢をとっさにかわした。しかしそれでバランスを
崩し、膝をついた。凄い形相でロギを睨んでいる。ロギは次の矢を構えていた。


一方弾き飛ばされたセイカは剣を杖代わりにして立ち上がっていた。

「くそ・・・どうしてだ・・・何で・・・俺の知り合いは・・・皆・・・
敵になっちまうんだよ・・・。ラキに・・・ビグに・・・今度は・・・
セルバかよ・・・。ふざけんな・・・はこっちの台詞だ・・・セルバ・・・。」

ぶつぶつと呟きながら立ち上がるセイカ。セイカはセルバを睨んでいた。

「・・・どうすりゃいいんだよ・・・!!」

吐き捨てるように言うとセイカは剣を構えて走り出した。


セルバはすぐに立ち上がりロギの方に走り出していた。ロギが矢を放つが
軽くかわされてしまう。セルバがロギを斬ろうとするとロギの前にキールが
現れ、右手をセルバの方に突き出していた。

「水魔法(ウォーターストライト!)」

「ぐっ・・・!」

セルバは水柱に押されて後ろに地面を削りながら下がっていく。

「・・・この程度で・・・止められてたまるかああああ!!」

セルバがそう叫ぶと水圧に押されながらもセルバは横に飛び出し水柱を
かわすとすぐにキールの方へ飛んだ。まるで、拳銃の弾の様なスピードで
向かって行くセルバ。

「「っ!!」」

ロギもキールも驚いていて、反応が出来なかった。

「邪魔だ・・・くっ・・・。」

キールに斬りかかろうとしたセルバだがセイントプロテクトをフィート
コンセントレイションしたセイカに攻撃され、剣で受けたのだ。
セルバはそのままセイカの剣をはじいたが、セイカははなから剣を捨てる気
だった様で手をすぐに放した。

「何!?」

セルバが少し驚く。その隙にセイカはセルバの左頬にパンチを入れた。

「ぐっ・・・てめえ!!・・・え・・・?」

剣で今にもセイカに斬りかからんとしたセルバの動きが止まった。
セイカの顔を見て止まっている。

「ふざけんなよ・・・セルバ・・・。」

セイカの声が震えている。目からは涙が溢れてきていた。

ガラン・・・

手に持っていた剣を落とすセルバ。異様なオーラも静まっていくセルバ。

「・・・あ・・・悪い・・・。・・・俺・・・くそっ・・・!!」

膝から崩れて地面に手をつくセルバ。

「良かった・・・止まってくれた・・・。・・・俺は・・・もう・・・
知り合いとは・・・戦いたくねえよ・・・もう・・・やめてくれ・・・。」

声を震わせたままセイカが言った。

「・・・ああ。・・・悪かった・・・でも聞きたい事が・・・いくつもある
・・・それに納得がいかなかったのなら・・・俺は・・・自分が何しでかすか
・・・わからねえ・・・。」

顔を伏せたままセルバが小さい声で言った。セイカはその言葉に少し驚いた
顔をした。

「俺も・・・何があったのか・・・知りたい・・・。お前がいきなり
斬りかかってくるなんて・・・な。」

「・・・ああ。」

セルバはまた小声で答えた。キールがセルバがおとなしくなったのを
確認すると周りの人に指示を出していた。

「パールとロギ、ルサとルビー。あとダーゴ。お前たちは町に逃げ遅れた人などが
いないかどうか探してきてくれ。比較的元気だろ?俺はセルバの話を聞いて
おきたい。」

キールがそう指示を出すと各々がうなずいたり返事をしたりして散っていった。
ダーゴだけが少し行くと止まってキールのほうを振り向いた。キールはすでに
セルバのほうに向かっていっていた。

(あなたはわかっていませんよ・・・それとも試しているんですか?
ハーフの俺が・・・いや、僕が行ったところで・・・人が助けを求めてくる
わけがない・・・危険な物だと・・・判断されるのがオチですよ・・・。
でも・・・あなたが何も考えずそういう人助けに私を使ってくれるのは
・・・本当に嬉しいです・・・。くっ・・・何がしたいんだ・・・僕は
・・・。)

自分の中で沸き起こる二つの感情。それは決して相容れない。

『人を信じたい自分』『人を憎む自分』

その考えを打ち消すように頭を振ると走り出したダーゴ。


「・・・俺から聞いていいのか?」

ようやく顔を上げたセルバがセイカに向かって言った。セイカは静かに頷いた。

「何で・・・そいつとセイカが一緒にいるんだ?」

セルバは顔がひきつり、手を震わしながらイザスクを指差して言った。

「え・・・知ってるのか?・・・って事は何かあったのか!?こいつの事で。」

嫌な予感が頭をよぎったセイカが勢いで聞き返す。セルバがセイカをにらんだ。

「・・・知っているのか?こいつがどういう力を持っているのか・・・。」

こぶしに力が入るセルバ。それに気づいたセイカが慌てて言った。

「ちょ、落ち着いて聞けよ・・・。確かにこいつは恐ろしい力を持っている。
そして今まで俺達もイザスク・・・つまりあいつと戦ってたんだ。」

セイカが必死に説明をしようとしている。

「・・・?どういうことだ?一緒に旅をしていたわけでは・・・
ないんだな?」

セルバは少し力が抜けたように言った。

「ああ、俺も実際はあまりこいつの事知らない。」

「・・・俺の早とちりだったのか?・・・悪い、説明してくれ。」

拳から力を抜くセルバ。

「ああ、わかった。・・・え〜と・・・どこから話せば・・・。」

セイカが安心して話し出そうとした。

「俺が話すよ。セイカの話じゃまたセルバに勘違いされちまうよ。」

キールが割って入った。

「そりゃねえだろ・・・。」

そう言いつつも納得してセルバの正面をあけるセイカ。するとキールが
説明し始めた。封印師の事、そして暴れだしたイザスク。つまりカンザスに
なった経緯を。

「・・・つまり、あいつはもう危険な人物じゃないって事か?
俺たちの町を襲った奴は・・・もうお前たちが倒したって事なのか?」

信じがたいことを次々に言われたセルバはとりあえず自分がもっとも知りたい
疑問だけをとりあえず切り返した。

「まあ・・・そういうことになるな。イザスクって言うんだがこいつは
俺たちがピンチのところを救ってくれたことがあるしな。危険な人物では
ないと思いたいな。それは俺もこれから見極める。お前が思っているとおり
本当は危険な人物かもしれない。みんなは信じているみたいだがな。あ・・・
アラベルの友達らしいしな。だが危険かどうかは俺には断言はできない。」

キールがまじめな顔をして答える。セルバはそのキールの目を見つめていた。

「・・・わかった・・・。セイカに頼ることなんてなかったな。」

わかった--------その言葉はセルバ自身に言い聞かせているようだった。

「余計なことは言わなくていいぞ、セルバ。」

セイカが少しむっとした顔をして言った。

「けっ・・・余計じゃねえよ。本当はお前となんか会いたくなかったよ!
お前といるとそれだけでむかつく。」

セイカから顔をそらしながらセルバは言った。

「何!?てめえから勝手に来たんだろ!?ふざけるな!!」

明らかな挑発に乗って起こるセイカ。

「何だ?やるのか・・・?」

それに呆れたのかセイカに顔も向けずにそういうセルバ。

「く〜〜〜!!お前のそういう態度むかつくんだよ!!」

セイカがセルバの横顔を見ながら言った。

「どういう態度とったってむかつくくせによく言うぜ・・・。」

うっと言葉を詰まらせたセイカを放って、キールたちから少し距離を
とろうセルバ。

「おい、どこに行くんだ?」

キールがセルバの後姿に聞いた。

「ちょっと・・・な。本当にそこに行って戻ってくるだけだ。」

セルバは後姿のまま手を上げ適当に振りながら言った。

「・・・わかった。」

キールが何か察したように言った。セルバはそうして少しキール達と
距離をとった。そして、一度振り返りイザスクを見ると元に戻り目をつぶった。

(わかっている・・・あいつらの言うことが嘘だとは思わない。それでも
・・・納得はできない・・・俺の中の憎しみ・・・怒り・・・。くそっ・・・
考えちまった・・・。やっぱり憎いんだよな・・・あいつが・・・。ずっと
避けてきた考え・・・でも俺は暴走した・・・。あいつへの憎しみで心が
支配された・・・。戦士・・・失格か・・・。それでも俺はあいつを・・・。)

許せない--------確実に次に浮かぶ言葉。しかしセルバはそれを拒否した。
考えそうになったのを首を振って打ち消した。認めたくない。それを認めて
しまったらもう、タド達と完全に離れてしまう気がしたから。戦士でなくなると
言うことは暗にタド達との関係を絶つことになると思っていたから。

セルバは大きく深呼吸をして、走ってキール達の元へ行った。走るほど距離が
あるわけではない。歩いていると考えてしまいそうだったから、走ることで
少しでも先ほどまでの思考から脱してキール達から来るであろう質問で早く
先程の嫌な思考を打ち消してほしかったから。

「もういいのか?」

キールはもう少し時間がかかるものだと思っていたのだろう。少し意外そうな
顔をしながら聞き返す。

「ああ、俺にも質問することがあるんだろう?それに・・・吐き気のする
ようなこの場所では物思いにはふけってられないよ・・・。早くこの町を
出たほうがいいんじゃないのか?別にこの町が目的の町ってわけじゃない
んだろ?」

セルバは少しあたりを見渡して言った。

「そう!そうよね!!吐き気するわよね!何であんた達は大丈夫なのよ!!
いつもあたしは夜になると最近気持ち悪くて吐くんだからね!」

アラベルがセルバの『吐き気のする場所』を取り上げて叫ぶように言った。

「大丈夫なわけないだろ?俺だって吐くさ。・・・堂々と言う事じゃないがな。
さすがにシーラルは吐き気抑えるので苦しかったぜ。あの場では吐いてるわけ
にもいかなかった。それに・・・慣れちまってると言えば慣れているほうなの
かもしれないし、別の感情で心が支配されちまって・・・用は精神が肉体を
凌駕するって奴だろ?」

セイカがアラベルに切り替えした。

「え?・・・そうなの?」

少し意外そうにセイカの顔を見ながら言った。

「当たり前だ。俺達は殺人鬼じゃねえんだぞ?」

どこかあきれたように言うセイカ。キールはその雑談を聞きいってしまった
ことに気づくと、すぐにセルバに話しかけた。

「悪い・・・確かにそうだな。でも今はまだ、ダーゴたちが戻ってきていない。
大部分の町人達はもうチイセの町に逃げたとは思うが・・・もし生き残りが
いるのなら助けたいだろ?」

「そうか・・・それでここにヒーラーがいないのか。」

セルバがあたりを見渡した。

「え〜と・・・いいですか?」

イザスクが控えめに会話に入った。キールがそれに気づくと振り向き
セルバは顔を背けた。

「何だ?」

「・・・ルサ達の方に行ってもいいですか?なんか話についていけないので
・・・。」

「・・・アラベルとは話すことないのか?」

素朴な疑問をぶつけるキール。イザスクはちらっとアラベルの方を見て
すぐにキールに視線を戻す。

「セイカって人と話していて相手にしてくれないんです。」

「・・・でも今から行って追いつけるか?少し行って姿が見えなければ
すぐに戻ってくるならいいと思うが・・・。」

キールが腕を組んで言った。イザスクが嬉しそうに笑った。

「はい!」

そう言うとイザスクはルサ達が行った方に走って去っていった。



ダーゴが町の中を歩きながら生存者を探していた。ところどころ地盤が
崩れていて上の建物も崩壊していて、火もついているところもあった。
カンザスが暇つぶしにやったことだろう。
すると、瓦礫からガラッと音がした。ダーゴがすぐに右手に手斧を
構えて前に出して、音がした方を向いた。

「・・・一人だな?」

瓦礫の影から声がした。

「・・・。」

ダーゴは答えない。すると、瓦礫の影から人が姿を見せた。
邪魔にならないように適当に髪を切りそろえてある感じの髪を少し風に
なびかせながら動きやすくするためだろうかシャツをズボンの中に
しまっている上下黒の服の男がそこに立っていた。

「お前か・・・。」

ダーゴは構えを解いた。この人物はミエハスとシーラルを結ぶ川の船の上で
ダーゴが夜中に会っていた人物だった。

「首尾はどうだ?」

感情のないような目でダーゴを見ながら言う男。

「・・・どう答えていいのか・・・。今のところ有力な情報はないな・・・。
そちらは全然つかめてないのか?」

ダーゴは静かにそう言った。

「本来、人間界の人間のためにあったものだ。暗黒界では探せん。全く
手がかりはなしだ。」

ゆっくりと首を横に振りながら答える男。

「・・・だが、すでに二つはもう場所はわかっているのだろう?」

「ああ、あとは二つだ。」

「二つ?」

ダーゴが少し声を裏返して驚きながら言った。

「そうだ。われらの手元にあるのは対をなす物の一つだ。もう片方は
全くわかっていない。」

ダーゴは少し目線をその男からそらし考えていた。

「・・・そうか。そんなこともあるんだな・・・。だが俺達はそっちの方は
全く探している様子はない。いいのか?」

視線をその男に戻し言うダーゴ。

「構わん。・・・ん?お前、本当にダーゴなのか?」

少し後ずさりをする男。ダーゴは首をかしげた。

「何か変だったか?」

「前と一人称が違う。僕という一人称だと思っていたのでな。」

少し驚いた顔を見せたのはダーゴだった。

「そうか・・・俺・・・という一人称に戻っていたのか・・・。」

『人を憎んでいた自分』・・・それが俺という一人称に含まれる意味。
ダーゴはなんとなく頭でそう考えていた。それを確かめるように『俺』と
いう言葉を区切って言った。

「・・・そういえばお前は一度、戦士に捕まったんだったな。更生施設に
行った事もあるんだったな。それなら構わん。」

「・・・いいのか?」

「我らが欲しいのは情報だ。お前ではない。お前が誰だろうと情報を
くれている奴を敵だとは思わん。ただ警戒はさせてもらうがな。」

淡々と話を進めるその男。

「そうか。・・・だが・・・僕・・・達が探している物をお前達が手に入れた
としても・・・二つだ。いいのか?半分しか揃わないぞ?」

『人を信じたい自分』・・・それがつまり『僕』という一人称に含まれる意味。
それを頭で思い描きながらダーゴは『僕』という言葉を区切って言った。
一人称をまた変えたので少し間をおくその男。

「・・・結構だ。半分が我らの手に渡れば十分だ。一つは誰が持っているのか
わかりきっているからな。それを奪えばいい。三つ揃えば一応は揃った
事になるからな。・・・これ以上は詮索するな。そういう約定だ。」

「ああ、すまなかったな。次は・・・チイセだ。」

「了解した。」

そう言うとその男はすぐに暗黒界へ去って言った。

(・・・俺・・・か・・・。まあ、当然といえば当然か・・・。俺は
これっぽちも・・・更生された覚えは・・・ないから・・・。更生されたと
すれば・・・施設を出てからだな・・・。でもそれでは・・・遅すぎた・・・
そう・・・遅すぎたんですよ・・・キールさん。)

頭の中ではキールに再会してからほとんどの一人称が『俺』になっていた
ことにダーゴは改めて納得していた。だが、口にそれが出ていたことに
さっきの男との会話で実感したのだった。そんなことを考えているうちに
ダーゴはいつの間にか歩き出していた。そして、しばらく行くと瓦礫に足を
つぶされている人間を見つけた。その男はもうやるだけの抵抗をした後なのか
諦めたように顔を伏せていた。時たま、顔を上げるということをするので
生きているのが確認できる。その男がダーゴを見つけると、驚愕の表情を
浮かべ顔を伏せた。ダーゴがそれをわかっていながら近づいていった。
何故ならダーゴは自分の中にある薄い希望をこの人間に託すのだと決めて
いたからだ。

--------そう・・・それはつまり---------

「・・・大丈夫ですか?」

なるべく声をやさしくしてダーゴは言った。確かに声だけ聞けばどこかに
温かみのある声だった。だが、その男は顔を伏せたままだ。ダーゴは
深呼吸をするともう一度『大丈夫ですか?』と尋ねた。

---------ダーゴがまだ人を信じていたかったということなのに----------

少しの間をおいて男は観念したように顔を上げこう言った。

「大丈夫だ・・・ハーフに助けられるくらいなら死んだ方がましだ。」

「そうですか。」

ダーゴは笑みを返しその男から離れて行った。

----------結果はあっけなかった-----------

(わかっていたはずだ・・・こうなることぐらい・・・人間って言うのは
こういう物なんだ・・・。)

ダーゴがその人間から離れたのはそいつを見捨てたわけではない。止めを
さすため、自分が被害を受けないためだ。カンザスが崩した地盤のために
自然崩壊していく建物がいくつもあった。

「・・・これも自然崩壊の・・・カンザスの被害の一つだ。・・・死ぬことを
選んだのは・・・人間だ。」

ダーゴは近くの石を拾ってその石に、暗黒闘気をこめ、それを先程の
瓦礫に足をつぶされている人間がいる近くの建物に投げつけた。
建物が見事に崩れて人間に襲い掛かった。その男は断末魔を最後の言葉に
何も言わなくなった。

(これでも・・・僕・・・は・・・キールさん達の事は・・・本当に
・・・大好きなんだ・・・。)

ダーゴはその男が死んだのを確認するとキール達の元へ戻ろうと歩き始めた。
ダーゴは見方によっては悲しんでいるようにでも楽しんでいるようにも見て
とれる不思議な感じのする目をしていて、口元はゆがんで心なしか笑って
いるかのように見えた。

----------その男を死にいざなったこの時から-------------

----------ダーゴの『僕』という一人称は------------

---------『偽りの自分』を意味する事になり-----------

----------残された『俺』という一人称は必然的に-----------

----------『真実の自分』・・・そう人を憎む自分こそが---------

----------本来あるべき姿だと確信したのだった----------


だがダーゴはその時は気がついていなかった。そう一人称を位置づけした
次に言ったその言葉が信じてきたものを自分からすべて否定してしまった
ことに・・・。




[これでも         『『『僕』』』       は   ]
[                                ]
[                                ]
[                                ]
[     キールさん達の事は       本当に   ]
[                                ]
[                                ]
[                                ]
[             大好きなんだ!         ]
[                                ]


続く





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